
FP実技の相続の計算問題が苦手です。
どうすれば解けるようになりますか?

FPの相続の問題は、何度も問題を解いて、法定相続分のルールと解き方を覚えるのがコツです。
妻は、常に相続人です。 次に子どもが相続人になります。

2022年5月に行われた、最新のFP2級実技の相続の問題の解き方も詳しく公開中。
今回はFP2級実技の相続の計算問題が苦手な人向けに、過去問の詳しい計算方法と解き方を紹介します。

もし今回紹介した解き方で分からないところがあれば、気軽に質問してくださいね。
- FP実技の相続の問題が解けない人
- FP実技の相続の問題の解き方を知りたい人
法定相続分のルール
相続人が妻と子・養子・孫の場合
妻は½で、残りを子(代襲相続の場合は孫)や養子で分けます。
もし子どもがいない場合は、妻と親が相続人になります。
【妻・子1人】 妻½、子½
【妻・子2人】 妻½、子1人目¼、子2人目¼
【妻・子2人(子1人は死亡・孫1人が代襲相続)】 妻½、子¼、孫¼
【妻・子2人(子1人は死亡・孫2人が代襲相続)】 妻½、子¼、孫1人目⅛、孫2人目⅛ ※死亡した子に、こどもが2人いる場合、子1人分を孫2人で分ける
【妻・子2人・養子2人】 妻½、子1人目⅙、子2人目⅙、養子1人目⅙
※実子がいるときは、養子1人だけ加える
※相続放棄があったときは、放棄がなかったものとして法定相続人の数に参入する

代襲相続は、子が死亡しているとき、孫に相続が移ることです。

もし子どもがいない場合は、以下のとおり。
相続人が、妻と親1人の場合
妻2/3、親1/3
FP2級 過去問 実技 相続税の計算問題の解き方
2021年5月過去問 パターン1 相続人が妻と子の場合
設例

問題
現時点(2021年5月23日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は6億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | 6億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額((a)−(b)) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | ( ② )万円 |
長男Cさん | □□□万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に応ずる取得金額 万円超 万円以下 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~ 1,000 | 10% | 一 |
1,000 ~ 3,000 | 15% | 50万円 |
3,000 ~ 5,000 | 20% | 200万円 |
5,000 ~ 10,000 | 30% | 700万円 |
10,000 ~ 20,000 | 40% | 1,700万円 |
20,000 ~ 30,000 | 45% | 2,700万円 |
30,000 ~ 60,000 | 50% | 4,200万円 |

それでは実際に解いてみましょう。
問題の解き方
- 親族関係図から相続人が誰なのかと、人数を調べる
基礎控除額の計算方法
相続人は、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3人
【基礎控除の計算式】3,000万円+600万円×相続人数に当てはめると、
①3,000万円+600万円×3人=①4,800万円

孫が3人いますが、代襲相続(実子が死亡)していないので、孫は除きます。
- 相続税の課税価格の合計額から基礎控除を引いて、課税遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を法定相続分に分ける
- それぞれ相続税を計算する
法定相続分に分ける方法
相続税の課税価格の合計額6億円−基礎控除4,800万円=課税遺産総額55,200万円
法定相続分は、妻と子の場合、妻は½、残りを子の人数で分ける
この場合、子が2人なので、½×½=子は¼
課税遺産総額55,200万円を、妻Bさん½、長男Cさん¼、長女さんD¼に分けると、
妻Bさん27,600万円、長男Cさん13,800万円、長女Dさん13,800万円

あとは速算表を見て相続税を計算するだけです。
相続税の計算方法
妻Bさん27,600万円×45%−2,700万円=②9,720万円
長男Cさん13,800万円×40%−1,700万円=3,820万円
長女Dさん13,800万円×40%−1,700万円=3,820万円
相続税の総額9,720万円+3,820万円+3,820万円=③17,360万円
こたえ
①4,800
②9,720
③17,360
2022年5月過去問 パターン2 代襲相続人がいる場合
設例

問題
各相続人は<設例>の記載のとおり、相続財産を取得した。Aさんの相続に係る相続税の総額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
妻Bさんに係る課税価格 | ( ① )万円 |
長男Cさんに係る課税価格 | □□□万円 |
孫Eさんに係る課税価格 | 2,000万円 |
孫Fさんに係る課税価格 | 3,000万円 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | □□□万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ② )万円 |
課税遺産総額((a)−(b)) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | □□□万円 |
孫Fさん | ( ③ )万円 |
(c)相続税の総額 | ( ④ )万円 |
<資料>相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 万円超 万円以下 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~ 1,000 | 10% | 一 |
1,000 ~ 3,000 | 15% | 50万円 |
3,000 ~ 5,000 | 20% | 200万円 |
5,000 ~ 10,000 | 30% | 700万円 |
10,000 ~ 20,000 | 40% | 1,700万円 |
20,000 ~ 30,000 | 45% | 2,700万円 |
30,000 ~ 60,000 | 50% | 4,200万円 |
60,000 ~ | 55% | 7,200万円 |

それでは実際に解いてみましょう。
問題の解き方
次男Dさんは亡くなっているので、孫Fさんが相続人(代襲相続)
- 設例の相続財産から、それぞれ課税価格を計算する
- 親族関係図を見て、相続人と人数を確認する
- 計算式を使って基礎控除額を計算する
- 課税価格から基礎控除額を引いて、課税遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を法定相続人で分ける
- 速算表を使って、それぞれ相続税を計算する
1.妻Bさんの課税価格を計算する※死亡保険金と死亡退職金は、それぞれ相続税控除額を引くこと
【相続税控除額】500万円×相続人数
相続人は、妻Bさん、長男Cさん、孫Fさんの3人なので、
相続税控除額は、500万円×3人=1,500万円
設例から妻Bさんの課税価格は、現金および預貯金3,000万円+自宅(敷地)2,000万円+自宅(建物)1,500万円+死亡保険金1,500万円−相続控除額1,500万円+死亡退職金3,000万円−相続控除額1,500万円=①8,000万円
2.長男Cさんの課税価格を計算する
設例から、長男Cさんの課税価格は、現金および預貯金8,000万円+X社株式1億2,000万円=2億円
3.全員の課税価格を合計する
(a)相続税の課税価格の合計額は、妻Bさん①8,000万円+長男Cさん2億円+孫Eさん2,000万円+孫Fさん3,000万円=33,000万円
基礎控除額と課税遺産総額の計算方法
1.基礎控除額を計算する
【基礎控除額の計算式】3,000万円+600万円×相続人数
3,000万円+600万円×3人=②4,800万円
2.課税価格の合計から基礎控除額を引いて課税遺産総額を求める
【課税遺産総額】 課税価格の合計33,000万円−基礎控除額4,800万円=28,200万円

課税遺産総額28,200万円を法定相続分に分けます。
法定相続分に分ける方法
法定相続分は、妻Bさん½、長男Cさん½×½=¼、孫Fさん(次男Dさんの代襲相続)½×½=¼なので、
妻Bさん28,200万円×½=14,100万円
長男Cさん28,200万円×¼=7,050万円
孫Fさん28,200万円×¼=7,050万円

あとは上記の金額から速算表を使って、相続税を計算するだけ。
相続税の計算方法
妻Bさん 14,100万円×40%−1,700万円=3,940万円
長男Cさん 7,050万円×30%−700万円=1,415万円
孫Fさん 7,050万円×30%−700万円=③1,415万円
相続税の総額3,940万円+1,415万円+1,415万円=④6,770万円
こたえ
①8,000
②4,800
③1,415
④1,415

相続財産のところで孫Eさんが出てきますが、<設例>を見ると長男Cさんは生きているので、法定相続人(代襲相続)ではありません。
相続財産の合計額を計算するときに必要なだけです。
2018年1月過去問 パターン3 相続時精算課税制度の適用がある場合

問題
仮に長男Cさんが相続時課税精算制度の適用を受けた後に、Aさんに相続が開始した場合の相続税の総額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。
なお、Aさんから贈与を受けた賃貸マンションの建物の贈与時点の相続税評価額は3,000万円で、相続開始時点の相続税評価額は2,900万円である。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

贈与時か相続時のどちらの価格を選ぶかがポイントです。
(a)課税価格の合計額 | ( ① )万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ② )万円 |
課税遺産総額(a・b) | □□□万円 |
相続額の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
二男Dさん | ( ③ )万円 |
・ ・ ・ | ・ ・ ・ |
(c)相続税の総額 | ( ④ )万円 |
<資料>相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 万円超 万円以下 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~ 1,000 | 10% | 一 |
1,000 ~ 3,000 | 15% | 50万円 |
3,000 ~ 5,000 | 20% | 200万円 |
5,000 ~ 10,000 | 30% | 700万円 |
10,000 ~ 20,000 | 40% | 1,700万円 |
20,000 ~ 30,000 | 45% | 2,700万円 |
30,000 ~ 60,000 | 50% | 4,200万円 |
60,000 ~ | 55% | 7,200万円 |
解き方
- 設例の相続財産から、Aさんの財産の課税価格の合計額を計算する
- 親族関係図を見て、相続人と人数を確認する
- 基礎控除額を計算する
- 課税価格から基礎控除額を引いて、課税遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を法定相続人で分ける
- 速算表を使って、それぞれ相続税を計算する
1 設例からAさんの財産を合計します。
預貯金2億4,000万円+有価証券6,000万円+自宅の敷地3,200万円+自宅の建物2,000万円+マンション1億円=4億5,200万円
さらに長男Cさんの贈与分を足します。
相続時精算課税制度の適用を受ける場合、贈与時点の価格(3,000万円)で課税価格に加算します。
こたえ 45,200+3,000=①48,200万円
相続人は、妻Bさん、長男Cさん、二男Dさんの3人です。
【基礎控除額の計算式】3,000万円+600万円×相続人数
基礎控除額の計算式に当てはめると、3,000万円+600万円×3人=こたえ②4,800万円
1 課税価格総額から基礎控除額を引いて、課税遺産総額を求めます。
①48,200万円−②4,800万円=43,400万円
2 上記で求めた課税遺産総額を、法定相続分に分けます。
法定相続分は、妻Bさん1/2、長男Cさん1/4、二男Dさん1/4です。
よって、妻Bさん43,400÷2=21,700万円、長男Cさん・二男Dさん43,400÷4=10,850万円
3 あとは、速算表を使って税金を計算するだけ。
妻Bさん(21,700×45%)−2,700=7,065万円
長男Cさん・二男Dさん(10,850×40%)−1,700=こたえ③2,640万円
相続税合計7,065+2,640+2.640=こたえ④12,345万円
①48,200
②4,800
③2,640
④12,345
まとめ
FP実技試験の相続の問題は、パターン化されているので、法定相続分のルールと解き方を覚えてしまえばかんたんに解けるようになります。
何度も解いて練習すれば、すらすら解けるようになりますよ。
相続の問題が苦手な人は、今回の記事を参考に解き方の練習をしてみて下さいね。